「左胸が痛い」と感じたときに考えられる原因とは?
「左胸が痛い」と感じると多くの方は「心臓の病気では?」と不安に思われるかもしれません。確かに心臓が原因で生じる痛みは命に関わるケースもあり、早期対応が重要となります。しかし、左胸の痛みが生じる際は様々な原因が考えられます。今回は、「左胸が痛い」と感じた際に考えられる原因について記載をいたします。
「左胸が痛い」と感じる際は確認すべきこと
胸の痛み(胸痛)を感じた際に以下のような点に注目してください。胸痛の原因を特定に繋がります。
・痛みの性質(胸を刺すような痛み/胸が締めつけるような痛み/鈍い痛みなど)
・痛みの持続時間(数秒〜数分/数時間/持続的)
・痛みが起きた状況(安静時/運動中/深呼吸した際など)
・痛み以外の症状の有無(息切れ、吐き気、発熱、しびれなど)
・年齢や持病(高血圧、糖尿病、喫煙歴、心疾患の家族歴など)
上記のような項目をしっかりと把握しておくことで、胸痛を感じた際に原因特定に大きく繋がります。医師の診察を受ける際もお伝えするようにしてください。
「左胸が痛い」原因について
心臓に関係する疾患
- 〇狭心症・心筋梗塞
特に心筋梗塞は命に関わる重大な疾患の一つです。心臓の組織に酸素や栄養を運ぶ冠動脈が狭くなったり詰まるとで、胸の痛みが生じます。胸の痛みが肩やあご、左腕に広がっていくこともあります。「何かおかしい」と違和感を感じたらすぐ救急受診が必要となります。
特徴的な症状
・胸の中央〜左側で圧迫感・締め付け感を感じる
・歩行・運動・階段の昇降などで痛みの程度は悪化する
・狭心症の場合は数分~15分程度で自然に改善する
・心筋梗塞の場合は冷や汗、吐き気、呼吸困難を伴う
- 〇心膜炎・心筋炎
ウイルス・細菌感染などが原因で心膜(心臓を覆う膜)や心筋(心臓の筋肉)に炎症が生じる疾患です。
特徴的な症状
・胸を刺すような強い痛み
・深呼吸や横になると悪化することがある
・発熱、倦怠感、動悸などの症状を伴うこともある
肺や胸膜の異常
- 〇気胸(肺に穴があくこと)
気胸は主に若年男性や痩せ型の人によくみられます。肺が部分的にしぼみ、突然に胸痛や息苦しさを感じるようになります。症状が軽度であっても、気胸は再発しやすいため必ず受診するようにしてください。
特徴的な症状
・急に始まる鋭い胸の痛み
・呼吸に伴って痛みが増す
・息苦しさ、呼吸音の左右差がある
- 〇肺炎・胸膜炎
ウイルスや細菌感染などにより肺や胸膜で炎症が生じることで、左胸に痛みを感じるようになります。
特徴的な症状
・発熱、咳、黄色や緑の痰がでる
・呼吸時の痛み(特に深呼吸で悪化する)
筋肉や骨、神経の異常
- 〇肋間神経痛
肋骨に沿って走る神経が圧迫・刺激されて起きる痛みとなります。特にストレスや疲労、日常生活での姿勢の悪さが発症に関係している場合が多く、生活習慣の改善で症状が緩和することもあります。
特徴的な症状
・鋭い、またはピリピリするような痛み
・体をひねる、深呼吸で痛みが増すことがある
・圧痛(胸のあたりを押すと痛い)がする
- 〇筋肉痛・肋骨骨折
スポーツをしたり重い荷物を持ったあと、転倒後などに起きやすい筋肉由来の痛みです。肋骨骨折は軽視されることもよくありますが、痛みが強く呼吸に支障が出ることがあります。お早めに受診するようにしてください。
特徴的な症状
・筋肉を押したり動かすと痛む
・咳やくしゃみで痛みが強くなることがある
胃や消化器の異常
- 〇逆流性食道炎・胃潰瘍
胃の中にある食べ物などを消化させる胃酸が食道へ逆流することで胸焼けや胸のあたりの痛みを感じる疾患です。痛みが胸に近いこともあり、消化器の異常であっても心臓と間違えられることがあります。
特徴的な症状
・食後に胸のあたりがヒリヒリする、焼けたような鈍くて熱い感じがする
・横になると症状が悪化する
・ゲップ、喉の違和感、口の中が酸っぱい感じがする
- 〇膵炎・胆のう疾患
膵臓や胆のうで異常が生じた際は、左側の胸〜上腹部に痛みを感じることがあります。特に膵炎が原因となる際はアルコールをよく飲まれる方に多いのが特徴です。
ストレスやパニック障害
精神的なストレスや自律神経系が乱れることで、胸の痛みを感じるようになってしまいます。身体的な異常はみられなくても胸の痛みなどの症状はみられるため、心療内科での相談も有効となります。
・特徴的な症状
・呼吸が浅く速い
・胸が締めつけられるような不安感を感じる
・胸の痛みに加えてめまい、動悸、発汗などを伴う
「左胸が痛い」際に医療機関を受診すべきタイミング
左胸が痛む方で以下のような症状を伴う場合は、早急な受診が必要となります。また、「様子見でいいかも」と自己判断してしまうのは非常に危険です。特に高血圧や糖尿病、喫煙歴のある方に関しては、お早めに心電図や血液検査などを受けていただくことを推奨します。
・圧迫感のある胸の痛みが数分以上続く
・胸の痛みに加えて冷や汗や息苦しさ、吐き気を伴う
・痛みが左肩や腕、あごに広がっている
・安静にしても痛みは改善しない
・痛みが繰り返し起こる
「左胸が痛い」際は心臓とは限りませんが要注意を
「左胸が痛い」と感じたとき、考えられる原因は心臓、肺、筋肉、胃腸、精神的なものなど様々です。特に心臓疾患の可能性が考えられる場合は、一刻も早く医療機関を受診することが推奨されています。
一方で、日常生活が原因となって胸痛が発症しているケースも少なくありません。大切なのは、痛みの性質をよく理解し、我慢せずに相談することです。「ただの痛み」「どうせすぐに良くなる」と軽視していたら、実は…」といった事例は少なくありません。「左胸が痛い」と感じたら、ぜひ一度、医師に相談してみてください。