生活習慣病以外の病気については、こちらをご覧下さい。
インフルエンザが流行期に入ってきました。当院でも、連日多数の方が来院されています。
そこで、よくお話することをQ&Aでまとめてみました。(あくまで当院での方針です)
Q1. インフルエンザの症状とは?
A1. 38度の発熱、咳鼻水、咽頭痛、関節痛、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感があります。胃腸症状が伴う場合もあります。
症状は全てそろう訳ではなく、特にワクチン接種後は軽度な傾向があります。(それがワクチンのメリットでもあるのですが)
Q2. 家族にうつりますか? いつまで休めばいいですか?
A2. 潜伏期間が3日、発症(有症状)が3日、回復期が2日と考えて下さい。この間(計8日)、他人にうつす可能性があります。特に家族内では、高率に感染すると言われています。
会社は、「熱や咳などの症状が改善して48時間以上経過するまで」休みになります。
学校は、学校保健安全法に基づき、「高熱が出た翌日から5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」休みになります。学校とは、大学まで含みます。
Q3. 先ほどから高熱がでました。検査をして欲しいのですが?
A3. 発症(高熱が出た時点)から12時間以内は、検査をしても陽性にならない可能性が高いです。
具体的には、インフルエンザの患者さんで、検査が陽性となる確率が、
発症12時間以内:35%、12-24時間:66%、24-48時間:92%
というデータがあります。
ただし、症状とウイルス量は比例するというデータもあり、症状が重い場合は比較的早期に陽性になる印象があります。
Q4. 「症状がないインフルエンザの人がいて、他の人に広げている」と聞きました。
A4. インフルエンザの不顕性感染者(症状がまったくない感染者)が感染源になるかどうかについては、正確なデータがないため不明です。
確かに、不顕性感染者ののどや鼻でウイルスの増殖を認め、他の人に伝播することは可能とは考えられます。
しかし、そのウイルス量は発症者と比べ約1/10と少ないため、特別な場合を除き、感染が成立することは稀と考えられています。
Q5. 昨夜は高熱が出ましたが、今朝は下がっていました。インフルエンザではないですよね?
A5. 理由は不明ですが、インフルエンザなのに翌朝に一時的に熱が下がることをしばし経験します。
朝は熱が下がっても、夕方に上昇してくる可能性がありますので、受診して検査を受けることをお勧めします。
Q6. 「インフルエンザかどうか、検査してもらえ」と会社で言われました
A6. 申し訳ありませんが、検査キットには限りがあり、それほど信憑性が高い訳ではありません。
熱がない、風邪症状がない、元気、など診察時点で明らかにインフルエンザ発症とはいえないと判断した場合は、検査をお断りすることがあります。本当に必要な方のために、ご配慮ください。
会社には、「医者に行ったが、インフルエンザではないと言われた」で良いと思います。
Q7. 検査を受けないと薬をもらえないのですか?
A7. インフルエンザの診断に検査は必須ではありません。濃厚接触(発症した人と2m以内で会話や接触がある)や家族内発症があり、診察上明らかにインフルエンザと診断される場合は、検査は不要です。
Q8. インフルエンザになった後、「出社可能か、検査してもらえ」と会社で言われました
A8. インフルエンザが治癒したかどうかわかる検査はありません (診断の際使用する検査キットは、治癒したら陰性になる訳ではありません)。厚労省・文科省の通達でも、「治癒証明書を取得させる意義はない」と述べています。
Q9. 高熱が出たので、家にあったロキソニンを飲みました。
A9. インフルエンザの場合、ロキソニンによりインフルエンザ脳症を引き起こす可能性が指摘されています(特に10代の場合)。
医師によって意見が分かれますが、当院では他の解熱剤をお勧めしています。
Q10. 関節痛もあるので、痛み止めも欲しいのですが?
A10.「熱冷まし」には解熱作用と鎮痛作用が含まれるので、痛みにも有効です。
「最近、物忘れが多くなってきて・・・」
特に高齢の方にとって、認知症は興味ある話題だと思います。
先日、興味深い論文が発表されました。
金沢大学の研究グループが発表した論文をまとめますと、
・認知症や軽度認知障害(MCI)の発症に、緑茶・コーヒー・紅茶の摂取が影響を与えるのか調べた。
・60歳超の高齢者、約500名を追跡調査した。
・平均約5年間追跡した結果、認知症の発症率は5.3%、MCIの発症率は13.1%であった。
・緑茶をまったく飲まない群と比べて、緑茶を週に1~6回飲む群では約5年後の認知機能低下リスクが約1/2に、緑茶を毎日1杯以上飲む群では約1/3に減少した。
・コーヒーや紅茶ではこのような認知機能低下との関連はみられなかった。
との結果が出たそうです。
60歳を超えると、軽度を含め、5年間で約5人に1人が認知症になるというのはショックですね・・・
厚労省研究班の発表では、認知症の割合が、
65-69歳で1.5%、70-74歳で3.6%、75-79歳で7.1%、80-84歳で14.6%、85歳以上で27.3%
と、年齢が5歳上がるごとに、約2倍になっています。
85歳を超えると、約4人に1人が認知症ということになります。
私はコーヒー党でしたが、これからは緑茶にしようかな・・・
Q1. なぜ高齢者に肺炎球菌ワクチンが必要なのですか?
A1. 肺炎は2011年以降、日本人の死因の3位となっています。この肺炎による死亡者の95%が65歳以上であること、肺炎の原因菌として肺炎球菌の率が約30%と最も高いことから、65歳以上の肺炎球菌ワクチン接種が推奨されています。
Q2. 肺炎球菌ワクチンは、現在小児で予防接種をしていますよね?
A2. 実は、小児で使用されている肺炎球菌ワクチン(PCV13)と高齢者で使用される肺炎球菌ワクチン(PPSV23)は中身が若干違います。
Q3. 小児肺炎球菌ワクチン(PCV13)と高齢者肺炎球菌ワクチン(PPSV23)はどう違うのですか?
A3. わかりやすく説明しますと、PCV13が13種類なのに対し、PPSV23は23種類のタイプに有効です。しかし、効果はPCV13の方が強力です。
Q4. 高齢者はPCV13を接種できないのでしょうか?
A4. 実は、昨年6月より高齢者にも任意(自費)で接種可能になりました。
アメリカ(ACIP)では、PCV13の接種後、PPSV23を接種することを推奨しています。
日本では、PCV13が高齢者でも有効で安全あるという証拠に乏しいという理由で、積極推奨には至っていません。
Q5. もし、両方のワクチンを接種したい場合はどうなるのでしょうか?
A5. ①PCV13→PPSV23は6カ月~4年以内を推奨、②PPSV23→PCV13は1年の間隔 となっています。
最近、涼しくなってきました。
風邪なの?アレルギーなの?という方が増えています。
今日は、「秋のアレルギー」のお話です。
1)アレルギーの原因は何が多いの?
全シーズンでみますと、1位はハウスダスト、2位ダニ、3位スギ、4位ガ、5位イヌネコ、6位ゴキブリ、7位ヒノキ と続きます。
秋(特に10-11月)は昆虫アレルギーの発生しやすい時期で、ダニやガ、ゴキブリが増加します。
その他、秋は11位ブタクサ、12位ヨモギなども原因となります。
2)「ガ」なんか飛んでないですけど?
蛾は屋外だけでなく室内にも発生します。食品に発生するメイガ、衣類に発生するイガ などがあります。大きさは5mm前後の小さなものです。認知度は低いですが、要注意ですよ。
3)どうすればよいですか?
・食品は密閉性の高い保存容器で保存。発生した食品の破棄と掃除。
・衣類は洗濯してから収納。防虫剤をいれる。クローゼットの掃除。
・ゴキブリは、水回り、冷蔵庫の裏、ごみ箱や食品の周りの掃除。
「掃除をすればアレルギーは治る!」と言い切る先生もおられるそうで、主婦の方に嫌われているそうです・・・
男性型脱毛症(AGA)の患者さんが増えてきました。
今回は、AGAのガイドラインについて説明します。
AGAとは?
毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり、毛包がミニチュア化し、軟毛の割合が増加することです。
発症頻度は?
20代で12.5%、30代で20.5%、40代で32.5%、50代で39.9%。
特徴は?
男性では、額の生え際が後退し、てっぺんが薄くなります。
女性では、てっぺんの広い範囲が薄くなります。
薬にはどんものがあるの?
ミノキシジル(リアップ)やフィナステリド(プロペシア)があります。
女性にフィナステリドは効きません。
他に、塩化カルプロニウム(カロヤン)などがあります。
具体的は治療は?
中等症以上の男性は、5%ミノキシジルドやフィナステリドが推奨、
中等症以上の女性は、1%ミノキシジルドが推奨されています。
1年間使用します。
当院では、プロペシアの販売を行っております。(保険診療ではなく、自費診療となります)
ご興味ある方は、ぜひお問い合わせ下さい。
最近、牛肉の生食による食中毒で死亡する事件がありました。
今回は食中毒について です。
<症状>
嘔吐・下痢や腹痛・発熱を伴うことが多いです。
水分・塩分補給で治まることが多いですが、血便や脱水症状など症状が重い場合は受診しましょう。
<予防>
・つけない
菌を食品につけないように、手洗いをしっかり行い、調理器具を清潔にしましょう。
・増やさない
食品は新鮮なものを購入し、冷蔵・冷凍保存し、早めに使い切りましょう。
・殺菌する
多くの菌は熱に弱いので、充分加熱しましょう。
<主な細菌・ウイルス>
・ノロウイルス
カキなどの貝に含まれます。冬場(11月~2月)に多いです。
・大腸菌(O-157他)
殆どの大腸菌は無害ですが、一部病原性を持つものがあります。
O-111やO-157などの病原性大腸菌は牛の腸内に生息するといわれています。
・カンピロバクター
生の鶏肉からの感染が多いですが、未殺菌の牛乳や水、ペットからの感染例もあるようです。
この菌は低温に強いですが、熱と乾燥に弱いと言われています。
・サルモネラ
生の鶏卵からの感染が多いと言われています。
生卵は新鮮なものを食べましょう。
・腸炎ビブリオ
海水中に生息し、魚介類に付着して感染します。
夏場に多いです。
加熱や低温保存で予防できます。
・黄色ブドウ球菌
自然界に広く生息しますが、加工品(調理する人の手指の化膿創からの感染)が多いです。調理の際は清潔を保ちましょう。
夏場は汗をかいて・冬場は感染性胃腸炎(嘔吐や下痢)の流行により、脱水症状を起こす子どもさんが少なくありません。
脱水といえば点滴を思い浮かべる方も多いと思いますが、痛みも伴いじっとしていられない子どもさんの場合、家族も医師も大変です・・・
重症でない子どもさんに点滴を行うかどうか、で悩んでしまいますが、今日は経口補水療法の有用性について述べたいと思います。
数年前に欧米で急性胃腸炎のガイドラインが発表され、中程度までの脱水には経口補水療法が勧められています。
使用する経口補水液(ORS)の成分は、WHOにより定められており、スポーツ飲料より塩分が多く甘味が少ないイメージです。水やお茶、果汁などは塩分が少ないため、吸収されにくいとされています。
このORSは自分でも作れますが、「OS-1」という商品名で大塚製薬から市販されています。大塚製薬といえばポカリスエットが有名ですが、ポカリよりナトリウム濃度が約2.4倍、糖分が約4割と成分に若干違いがあります。この違いが吸収率に差を生むようで、スポーツ飲料ではORSの約5分の1しか吸収しないそうです。
飲み方のコツとしては、少量を5分おきにゆっくり飲ませます。もし少量でも吐くようなら15-30分後に再度試します。6回試みて駄目だったり、全身状態が悪い(普段と比べ、かなり弱っている)場合は医師に診てもらいましょう。
ORSは自分でも作れますので、もし脱水症状になった時はぜひチャレンジしてみて下さい。(結構塩辛いです・・・)
例)
・無塩トマトジュース 300ml
・水 700ml
・塩 3g
・砂糖 40g
特に寒くなってくると、夜間たびたびトイレに行きたくなるトラブルが増加します。高齢になとさらに増加する傾向にあります。
原因としては、主に、
・夜間多尿
・膀胱容量の減少
・睡眠障害
が上げられます。
「夜間頻尿」とは、夜間尿量が一日総量の1/3以上になることですが、夕方以降に水分を取りすぎるために起こることが多いです。「内科で寝る前に水分を取るよう勧められた」という方は多いのですが、最近では寝る前にあまり水分を取る必要はないというデータが出ています。
「膀胱容量の減少」は、膀胱に少ししか尿が貯められなくなることで、前立腺炎・膀胱炎・過活動膀胱など膀胱が過敏になるため起こると言われています。病気に応じたお薬を処方してもらいましょう。
「睡眠障害」は、種々の理由で眠りが浅いため目がすぐ覚めてしまい、そのつど気になってトイレに行くものです。
まず、水分の取りすぎに気をつけたり、よく眠れるように環境を整えたりして、改善されない場合はかかりつけ医に相談しましょう。
当院では、たくさんの方が高血圧の治療をうけておられます。
しかし一部の患者さんは自覚症状に乏しいためか、降圧の必要性を充分に理解されていないようです。
一方、認知症や脳卒中は長期間介護が必要になることから、自分がなりたくない病気で一番にあげられると言えるでしょう。
東京医科大、老年病科の岩本教授から興味深いお話を伺いましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。
<はじめに>
若年期からの不適切な生活習慣がそのまま中年期の生活習慣病となり、やがて老年期に病気を引き起こす。よい例が動脈硬化であるが、生活習慣病はアルツハイマー病にも影響を与える。すなわち、アルツハイマー病は、加齢が最大の危険因子とされる一方、生活習慣病などの要因がその発症に影響していることが明らかとなってきた。
<高血圧とアルツハイマー病>
高血圧がアルツハイマー病や血管性認知症の原因になったり増悪させたりすることは数多く報告されている。例えば、
・認知症になった人は中高年期の血圧が有意に高い。
・アルツハイマー病でもラクナ梗塞があると認知機能が有意に低下。
(ラクナ梗塞は高血圧によって引き起こされる)
すなわち、高血圧の持続→脳動脈の動脈硬化→ラクナ梗塞・血行不良
→加齢と共に増強→認知症 と考えられる。
したがって、高齢で発症するアルツハイマー病予防には若年期の高血圧管理が大切である。
<糖尿病とアルツハイマー病>
2型糖尿病もまたアルツハイマー病や血管性認知症の原因となり、糖尿病の人は健常人と比べ、2~4倍アルツハイマー病になりやすい。糖尿病により動脈硬化を引き起こすためと考えられる。
<高脂血症とアルツハイマー病>
中年期の高脂血症の人は健常人と比べ、約3倍アルツハイマー病になりやすい。
<喫煙・偏食・運動不足とアルツハイマー病>
喫煙・野菜不足・運動不足もアルツハイマー病の引き金になることが疫学調査で明らかとなってきた。
<結論>
健康に長生きするためには、若年期からの生活習慣を改め、生活習慣病になった場合は治療を行うことで、動脈硬化を防ぎ、脳を保護することでアルツハイマー病を防ぐ必要がある。