昨日、医師会主催の肺がん検診講習会(府立成人病センター中山富雄先生ご講演)に参加してきました。以前、この話題にちょうどぴったりな患者さんが来られたので、その時の会話を再現してみましょう。(大阪弁が苦手な方はご注意下さい・・・)
「先生、わし、たばこ吸うから肺がん怖いねん」
「禁煙いかがですか?人気ありますよ」
「いや、禁煙はする気はないねん。それより、検査してや」
「そうですね、市民健診は受けておられますか?」
「市民健診て、レントゲンやろ。レントゲンではわからんて聞くけど」
「確かに、アメリカの論文によると、年1回のレントゲンでは肺がんの死亡率は減らなかったと言われています」
「そうやろ。だからCTして欲しいねん」
「なるほど。ところでまず、喫煙者に多い肺がんと、非喫煙者に多い肺がんがあるのはご存じですか? 実は、喫煙者の肺がんはとても進行が早く、1年前は何もなかったのに、今年は手遅れということがあるんです」
「そんなに早いんか」
「そうなんです。反対に、非喫煙者の肺がんは進行が遅いため、発見される可能性が高くなります。そのかわり、淡い影なので、撮影条件や精度が問題となります。」
「たばこ吸わへん人の話はええわ。じゃあ、症状がひどなったら来たらええんか」
「いえいえ、症状があればそれは早期癌ではなくなってしまいます。そうなっては手遅れかもしれません」
「だから、CTしたらええんやろ」
「では次に、CTの説明をしましょう。CTのメリットとして、死角が少なく、解像度も高く、質的診断能(良性か悪性か判断できる)も高いと言われています。但し、被爆量が多く、時間がかかります。これを改善するため、放射線を減らした低線量CTが勧められています。但し、低線量にすると画質が落ちます。」
「わしは被爆していいから、きれいな写真にして」
「40歳以上だと、被爆よりメリットの方が高いと言われています。CTの写り方で、悪性度が高い『充実性』か、悪性度が低い『すりガラス状』か、わかります」
「やっぱCTはええがな」
「ただ、CTがよいかと言われると問題点もあります。まず被爆とコストです。それから、見えてしまうため、要精査になってしまう確率が跳ね上がります。たとえば、要精査率が10%で、がん発見率が0.3%(1000人に3人)とすると、要精査となった100人中97人はがんではないのに、がんの疑いと言われて検査を受けなければならなくなります。日本では要精査と言われる確率は2~15%位ですね」
「え、そんなにひっかかるんか」
「CT検診が有効か、アメリカで論文が出ました。そこでは確かに低線量CT検診で喫煙者の肺がん死亡率が減少したと書かれています。ただ、4人に1人が要精査となっており、精密検査で死亡する例があまりに多いと問題になりました。」
「検査で死ぬんか」
「まあ、日本では高くても0.3%程度ですが。おそらく重症の人が多かったのではと考えられています」
「だから結局、どうやねん」
「結局、CT検診の有用性は持ち越されました。まとめますと、CTが明らかに優れているとは言えないということですね。となると、やはり禁煙でしょうね」
「だから禁煙はせんて。もうええわ」
まあ、こんな感じですね。一度参考にして下さい。