当院では、たくさんの方が高血圧の治療をうけておられます。
しかし一部の患者さんは自覚症状に乏しいためか、降圧の必要性を充分に理解されていないようです。
一方、認知症や脳卒中は長期間介護が必要になることから、自分がなりたくない病気で一番にあげられると言えるでしょう。
東京医科大、老年病科の岩本教授から興味深いお話を伺いましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。
<はじめに>
若年期からの不適切な生活習慣がそのまま中年期の生活習慣病となり、やがて老年期に病気を引き起こす。よい例が動脈硬化であるが、生活習慣病はアルツハイマー病にも影響を与える。すなわち、アルツハイマー病は、加齢が最大の危険因子とされる一方、生活習慣病などの要因がその発症に影響していることが明らかとなってきた。
<高血圧とアルツハイマー病>
高血圧がアルツハイマー病や血管性認知症の原因になったり増悪させたりすることは数多く報告されている。例えば、
・認知症になった人は中高年期の血圧が有意に高い。
・アルツハイマー病でもラクナ梗塞があると認知機能が有意に低下。
(ラクナ梗塞は高血圧によって引き起こされる)
すなわち、高血圧の持続→脳動脈の動脈硬化→ラクナ梗塞・血行不良
→加齢と共に増強→認知症 と考えられる。
したがって、高齢で発症するアルツハイマー病予防には若年期の高血圧管理が大切である。
<糖尿病とアルツハイマー病>
2型糖尿病もまたアルツハイマー病や血管性認知症の原因となり、糖尿病の人は健常人と比べ、2~4倍アルツハイマー病になりやすい。糖尿病により動脈硬化を引き起こすためと考えられる。
<高脂血症とアルツハイマー病>
中年期の高脂血症の人は健常人と比べ、約3倍アルツハイマー病になりやすい。
<喫煙・偏食・運動不足とアルツハイマー病>
喫煙・野菜不足・運動不足もアルツハイマー病の引き金になることが疫学調査で明らかとなってきた。
<結論>
健康に長生きするためには、若年期からの生活習慣を改め、生活習慣病になった場合は治療を行うことで、動脈硬化を防ぎ、脳を保護することでアルツハイマー病を防ぐ必要がある。