血液が血管の中を通るときに血管にかかる圧力のことを血圧といいます。
心臓は、ポンプのように毎分60~70回ぐらい、血液を血管へと押し出しています。これが、いわゆる脈拍になります。心臓が収縮して血液を押し出した瞬間は、血管にいちばん強く圧力がかかります。これを収縮期血圧(最高血圧)と呼びます。そして、収縮した後に心臓がひろがる(拡張する)ときには、圧力がいちばん低くなります。これを拡張期血圧(最低血圧)と呼びます。収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが高くても、高血圧になります。
水道のホースに水を流すとき、水を多くすれば、ホースはぴんと張りつめた状態になりますね。これが、高い水圧がホースにかかっている状態です。また、どこかでホースを押えつけて通りにくくすれば、水の量は少なくても、そこからうしろのホースはやはり張りつめた状態になります。これと同じように、血圧も、心臓が送り出す血液の量(心拍出量)と、それを流す血管の通りづらさ(末梢血管の抵抗)とで決まってくるのです。
高血圧には、さまざまな原因があります。そのなかではっきりと原因がわかる高血圧を二次性高血圧(症候性高血圧)といいますが、これは全体の1割にもなりません。日本人の高血圧の大部分は原因が特定できない高血圧で、これを本態性高血圧と呼び、自覚症状はほとんどといっていいほどありません。
人によっては、高血圧と診断される直前から肩こりがひどくなったとか、頭痛がするようになったとかいう人がいますが、これも高血圧の特有の症状ではないので、症状だけで高血圧と判断することはできません。ですので、定期的に血圧を測っていないと、高血圧を発見することは難しいのです。
定期健診で早期発見できて、「血圧が高いから、精密検査を受けるように」といわれても、自覚症状がないからと放置する人がいますが、高血圧を放置しておくと、血管が硬くなる動脈硬化になったり、のちに虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳卒中などの発作など、命にかかわる病気を引き起こすおそれがあります。
日本人には高血圧の人がとても多くて、約781万人もの人が治療を受けています。そのため、かえってあまり危険な状態だという意識はないかもしれませんが、症状がほとんどないままに、長年かかってひそかに血管を蝕んでいくので「サイレント・キラー」とも呼ばれたりする、本当は怖い病気なのです。
Q. 血圧が高いと病気なのですか?
A. 血圧は、朝と夜とで違いますし、緊張していたり、ストレスがかかっているときなどには高くなったり、逆にリラックスしているときには低くなっったり、常に上げ下げを繰り返しています。
ですので、一度血圧を測って高かったからといって、高血圧というわけではなく、その後に基準値内に下がれば、問題はないのです。血圧がいつも高い状態が続いていることが病気であって、その場合には何らかの対応が必要になるのです。
Q. どんな人が高血圧になりやすいのですか?
A. 高血圧になりやすくする危険因子として、以下のものがあります。これらを多く持っている人ほど、高血圧になりやすいと言えます。
・遺伝
・肥満
・耐糖能異常(糖尿病予備群)
・ストレス
・喫煙
・塩分の多い食事
・飲酒の習慣
両親がそろって高血圧の場合、その子が高血圧になる確率は約50%、片親だけが高血圧の場合には子が高血圧になる確率は30%前後というデータもあり、遺伝性があるのは確かです。しかし、遺伝があっても、その他の環境的な危険因子をなくせば、高血圧にはなりませんし、その逆に、親にも高血圧の体質はあったものの、環境因子が整っていて現れずにいた場合には、子どもが不摂生な生活をすれば、高血圧になる可能性は大きくなります。